第7回 乗馬のためのアーサナ《筋力強化編①》

ヨガは柔軟性を高めたり心と体をリラックスさせるために行うものだと思っている方も多いかもしれませんが、正しい筋肉の使い方を意識して行うと同時に筋力も鍛えられるのもヨガの魅力のひとつです。また、目的に合わせてアーサナ(ヨガのポーズ)を選んでいくこともできます。例えば朝行う場合や運動不足だと感じる時は、体を活性化させるアーサナを多く選び、夕方以降に行う場合や体が疲れている時には、リラックス効果のあるアーサナをより多く取り入れると良いでしょう。乗馬の時に背筋をまっすぐに保てないという方は体幹にアプローチできるアーサナを、脚が安定しない方は太腿やふくらはぎにアプローチできるアーサナを中心にというように、ターゲットを絞って練習していく方法もあります。目的やテーマを持ってヨガを行えば、より大きな効果が期待でき、モチベーションもアップすることでしょう!

今回は全身を使い背中や脚の筋肉を鍛えることができる『ダウンドッグ(下向きの犬のポーズ)』をご紹介します。あらゆるアーサナの準備として頻繁に行われる代表的なものでありながら、苦手な人が多いアーサナでもあります。しかし、逆に普段使えていない体の部分を発見することができ、ダウンドッグを通して矯正することができるでしょう。それでは、コツを交えながらやり方を見ていきましょう。

まず四つん這いの姿勢で膝は腰の真下、手は肩の真下にくるようにしましょう。手のひらはしっかり広げ、つま先は立てます。そこから息を吐きながら膝を床から離し、お尻を持ち上げていきましょう。背骨を長く伸ばし骨盤は天井へ向け、坐骨は後ろに向くようにします。徐々に両膝を伸ばしていき太腿の付け根を後ろに押しながら、かかとを床につけましょう。手のひらと指全体で床を捉えるようにし、手首から肩の方向に腕の筋肉を引き上げるように意識します。肩甲骨も尾骨に向かって押しあげるようにし、頭は両腕の間で保ちますが、同時に肩と首が力まないようにリラックスさせます。腕から背中、かかとからお尻までがしっかり伸び、綺麗な「A」のような形になれば完成です。呼吸を続けながらこの姿勢をキープし、その後息を吐きながらゆっくり膝を曲げて元の姿勢に戻りましょう。

よくある問題点として、足よりも手の方に体重が多く乗ってしまったり、かかとが床につかないなどがあります。背中を長く保ちながら肩甲骨と骨盤を落とし込み、お腹を太腿に近づけるように意識することで、重心を後ろに移動させるようにしましょう。また姿勢を保つのがキツい場合は、膝を軽く曲げたままでいいので、背骨を伸ばすことを優先させましょう。左右の膝を交互に曲げ伸ばしし、脚の後ろ側の筋肉の柔軟性を高めてから、両膝を伸ばすのもオススメです。

このアーサナでは、手、肩、ハムストリング、ふくらはぎ、背骨を中心に体全体を深くストレッチすることができるとともに、体幹、腕、脚の筋肉を強化することができます。これにより、肩こりや疲労感の軽減や姿勢の改善も望めます。さらに頭が心臓より下にくるため、脳への血液供給が促進され、ストレスの軽減や集中力の向上といった効果もあると言われています。継続的な練習により、他にも頭痛、不眠症、副鼻腔炎、ぜんそく、扁平足、更年期障害の症状を和らげることが出来る場合もあります。注意として、手首や脊椎の関節、あるいは心臓に障害のある方、高血圧の方、または妊娠後期の方はダウンドッグの練習は行わないようにしてください。

全身のストレッチと同時に、乗馬時にも重要となる体幹や脚、腕の安定につながる筋肉を鍛えることができるダウンドッグで、さらに自分の体を知り、安定した騎乗姿勢を手に入れましょう!

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執筆者:市村美歩
2016年、イギリスWrittle University College, Equine Sports Therapy and Rehabilitation(馬のスポーツセラピーとリハビリテーション専攻)の学位取得。2019年インドにて全米ヨガアライアンス認定ヨガ指導者資格取得。 
現在は『Miho Ichimura Equine Sports Therapy』で馬のマッサージを中心とした整体、スポーツセラピーのサービスを提供。海外の馬情報もSNSで配信中。

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